令和7年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業(第二期)報告会が、2026年2月25日(木)に国立新美術館にて開催・配信されました。メディア芸術連携基盤等整備推進事業は、2024年8、9月に開催された「マンガ、アニメ、特撮、ゲーム等の国際的な振興拠点及びメディア芸術連携基盤等整備推進に関する検討会議」で示された方向性も踏まえ、日本全体のメディア芸術作品および関連資料などの体系的な保存・活用の推進に向け、産官学ネットワークを活用したマンガ、アニメ・特撮、ゲームの3分野の拠点形成によるアーカイブの推進、メディア芸術の分野を横断した課題に対応するための調査研究およびノウハウの共有などを目的としています。報告会では、本事業の一環として実施した3分野の分野別拠点形成事業の取り組みが報告され、有識者検討委員からの質疑や助言が加えられました。また、分野横断型調査事業報告、メディア芸術アーカイブ推進支援事業報告、「マンガ・アニメ等中間生成物の保存活用事業」の紹介も行われました。本稿では分野別拠点形成事業のうちの「マンガ原画および刊本におけるアーカイブセンターの運営と資料の分散収蔵に向けた拠点形成」を取り上げます。

報告者:一般社団法人マンガアーカイブ機構 代表理事 大石卓
今年度から、一般社団法人マンガアーカイブ機構(以下、MAC)がマンガ分野の事業を行っている。MACには産学官連携を基調とした関係組織・団体等が会員として参画し、その会員が持つ知見や技術を生かして効率的に事業を遂行している。
今年度は、マンガ原画アーカイブセンター(以下、MGAC)とマンガ刊本アーカイブセンター(以下、MPAC)の窓口を秋田県横手市に統合し、業務効率化を図った。横手市ではマンガの中間生成物である原画と、その最終形態である刊本をアーカイブし、資料の保管や整理、広報、人材育成などを実施している。また、資料の分散収蔵に向けて、横手市のほか全国5ブロック(北海道・東日本・西日本・九州・沖縄)における拠点形成を進めた。各ブロックでは中核施設を置き、新たな参画館の確保や会議の開催、資料の一時保管業務を行う。
北海道ブロックは、道内のミュージアム施設の設置を目指すマンガ家らの団体「北海道マンガミュージアム構想」と連携し、既存の施設や団体における資料保存の可能性を探るヒアリングや、構想メンバー(マンガ家)に対するアンケート調査などを行った。現在、北海道には拠点となり得る施設はないが、調査結果をもとに拠点施設の設置につなげていきたい。
東日本ブロックでは、東洋美術学校 保存修復科(東京都新宿区)との協働で紙資料の保存環境の調査を行った。温湿度を機械空調で管理している横手市増田まんが美術館の収蔵庫と、自然空調で管理する土蔵に、それぞれ温湿度ロガーを設置してデータを採取。現在、調査の初期段階で分かったこととして、機械空調により管理された環境下では、人の出入りなどにより空間に動きがあると機械が常時稼働し、また、短期的な周期での温湿度の変動が観測された。一方、自然空調により管理された蔵の内部は、人が出入りしたとしても、その動きは緩慢であった。歴史的建造物などが、機械空調に頼らない保存施設として再活用できる可能性が見えてきている。今後も調査を続け、保存施設の提言につなげていきたい。
西日本ブロックでは拠点を京都に設置し、主に刊本資料を扱い、活動を展開した。2人のコレクターからの寄託資料を整理し、書誌データを作成したほか、今後の活用方法を含めた協議を行っている。
九州ブロックでは、民間の事業者を含めた新たな体制で事業を進めた。主に橋本博氏から寄託を受けた刊本資料の整理と書誌データを作成した。また、湯前まんが美術館や合志マンガミュージアムで視察および協議を行うなど、九州ブロック内で原画の一時保管の受け入れが可能な施設を調査した。
沖縄ブロックは、沖縄県在住で50年にわたり戦争マンガを描き続けている新里堅進氏の原画の保存と整理をきっかけとして活動を続けている。今年度は、うるま市との協議が進み、うるま市立海の文化資料館への資料の一時保管が実現した。沖縄独自のマンガ文化を支えてきた『コミックチャンプルー』1の作家陣の原画保管も進んでいる。
MGACには今年度18件の相談があり、11件・約8万6000枚の原画を一時保管した。これまでの分も含め、43作家・約53万枚の原画をMAC管理施設や事業参加施設で保管している。また、MPACには今年度11件の相談があり、新たに9件の寄贈と寄託を受けた。今後、刊本資料の寄贈が増えることが見込まれるため、受け入れフローや整理体制の見直し、新規保管場所調査を進めていく。
今後は資料保管や人材確保、隣接事業との連携を軸にした将来設計、そして窓口業務のあり方についても議論していく必要がある。資料保有者が自身での保管を意識し始めているなかで、窓口として相談を待ち、それに応じた保管・継承を私たちが担うという構図にとどまらず、資料保有者のさまざまな情報やニーズを把握し、それに寄り添ったいわば能動的な窓口業務ができるよう来年度に議論を深めたいと考えている。

脚注