令和7年度 令和7年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業(第二期)報告会 分野横断型調査事業報告・総括

会場の様子

分野横断型調査事業報告

報告者:メディア芸術コンソーシアムJV事務局 平尾宏一郎

分野横断型調査事業は、以下の4つのテーマで取り組みを進めた。

①「アーカイブ対象の修復・修繕に関する調査研究」については、マンガ原画と、アニメ制作の中間生成物のうち紙資料を対象に、事例調査と研究機関・事業者のリスト作成を進めた。まずは保存・収集を行っている団体や美術館などにヒアリング調査をした。その結果、現時点では修復や修繕のニーズは限定的であることと、経年劣化を遅らせるための活動が重視されるべきだという意見が聞かれた。今後は一般に行われている措置や措置の事例調査や保存環境の調査と、有識者と作業現場をつなぐチーム組成を目的としたリスト作成を行う。

②「メディア芸術分野における研究者コミュニティ・学会等および関連する研究者・有識者等の状況に関する調査研究」については、京都大学大学院文学研究科の松永伸司准教授と共に、昨年度までの研究成果と課題を踏まえ、令和8年度以降の具体的な実施方針を策定した。今後は国内のメディア芸術研究の代表的な文献を英語に翻訳し、公開する。また、作家のインタビューを中心に、歴史記述のための一次資料の目録を作成する予定である。

③「インスタレーションやボーンデジタル作品等におけるアーカイブ事例の調査」では、今年度はゲームエンジンを活用したデジタル作品の保存状況を作家や企業などにヒアリング調査した。その結果、同じゲームエンジンを用いた作品でも、作品の形態やテーマにより保存対象や手法、再現方法が大きく異なることが分かった。今後はプラットフォーム提供会社とも連携しながら、課題や将来的なアーカイブ手法などを整理していく。

④「メディア芸術のアーカイブの情報流通〜アーカイブ機関の課題・知見共有のためのネットワーク構築」では、自治体を中心としたアーカイブ機関関係者の情報共有の場である自治体連携会議を2回実施した。(第1回会議は31団体、第2回会議は29団体が参加)。また、アーカイブ機関同士の合同情報交換会を1月に開催した。2回の会議を通じ各機関の取組ならびに課題を共有し、連携の可能性を模索した。

戦略委員による総括

株式会社バンダイナムコフィルムワークス 代表取締役社長 浅沼誠

日本国内での、マンガ・ゲーム・アニメ分野に関するアーカイブの意識が向上し、少しずつ身近になってきたと実感している。民間企業からすると、エンターテインメントのコンテンツソフトについては、過去を振り返らない傾向がとても強い。特にゲームでは、プラットフォームが変わると過去を全て忘れ去り、新しい事業を行なってきた。歴史的に資料の保存がされていないことが前提であるため、一つ一つの取り組みの積み重ねが大事だと感じる。引き続き協力していきたい。

浅沼氏

東京大学大学院 人文社会系研究科 准教授 大向一輝

モノや、その背後にあるコトの整理を進めていくと、それらを実際に担っているヒトのネットワークが見えてくる。逆にヒトのネットワークを可視化することで、アーカイブを効率化できる可能性があると感じた。また、中間生成物に少しずつ確実にフォーカスが当たってきていると感じる。中間生成物と最終成果物のつながりを可視化することで、両者の価値創造や活用につながる。そうした面をデジタル基盤で支えたい。産業界に参画してもらうためにはインセンティブがほしいところだが、同時に理念も重要であるため、その両方を明確にできると良い。

大向氏

筑波大学 名誉教授 杉本重雄

伝統的なミュージアムやライブラリーなどとは異なる立場の人たちが、本事業のネットワークには集まっており、新しいことをやっていくんだという熱量の高さを感じた。特に、産業界との連携や、熱心なファンのコミュニティの存在が、ある種のメリットなのではないか。単にデジタルアーカイブをつくるだけではなく、使ったり、伝えたり、つながったりする要素がなければ実際のものとはならない。10年後もこの熱量が続くか、考えながら進める必要がある。各分野を縦糸、共通のデジタル技術を横糸としたら、この場を使って縦糸と横糸をうまく編み上げていただきたい。

杉本氏

ZEN大学 知能情報社会学部 教授、コンテンツ産業史アーカイブ研究センター 所長 細井浩一

1年ごとに成果が見えてきており手応えを感じる。その一方で、難しい課題も明らかになっている。100年前、インテリが主導する民藝運動によって、民具や工芸品を対象とする生活の芸術が生まれた。このアーカイブ事業は消費者の熱量が起点となっているが、生活の芸術という側面が強く、民藝運動と通じるところがある。民藝運動は長い時間をかけて展開し、運動の裾野が広い。本事業も、産官学商を動かすエネルギーを維持し、裾野を広げていくことが重要になるだろう。

細井氏

株式会社集英社 取締役相談役 堀内丸恵

今年度は、3つの分野がそれぞれ一歩前進した節目の年だ。文化庁が実情の把握に努め、産学や有識者の声を丁寧に受け止めながら事業を積み重ねてきた結果だろう。分野ごとに背景や難易度は異なるが、事業を継続していくことが大事だと感じている。日本のアニメやゲーム、マンガは、国内外から注目されているが、どういう環境であっても続けていくことが大事なので、引き続き私どもも努力をしなければいけないし、皆さんにも強い関心を持って本事業に取り組んでいだけることを願っている。

堀内氏

学校法人京都精華大学 理事長、京都精華大学 マンガ学部 教授 吉村和真

アーカイブを産業界やファンカルチャーと一緒に進めていくのは、メディア芸術領域の強みでもあり課題でもある。「なぜ残すか」という問いに対する答えは、産業界やファンの一人ひとりにもそれぞれにあるのではないだろうか。各分野の作品が、それだけ幅広い人に影響を与えてきたことを意識しながら、収集の仕組みをつくっていくべきだろう。確かにアニメやゲームは権利関係が複雑ではあるが、みんなでつくったものだからこそ、みんなで大切に残していこうという求心力に変えることもできるのでは。難しい部分をそんな力に変えられるような仕組みをつくりながら、この座組の強みを生かしていきたい。

吉村氏

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