令和7年度 報告会・実施報告書「ゲームアーカイブ所蔵館の連携強化に関する調査研究2025」学校法人立命館 立命館大学ゲーム研究センター

報告者:立命館大学 ゲーム研究センター 准教授 尾鼻崇

ゲームのアーカイブ事業の課題

ゲームは、動作して初めてその内容が評価されるため、アーカイブに当たっては動態保存が求められる。しかし、例えばアーケードゲームは筐体が大きく、保管コストが高い。また、コンシューマ用やPC用といったプラットフォームごとに保存手法が異なり、権利関係も極めて複雑である。こうした技術的・経済的・法的なハードルをいかに解決するかが重要となっている。

受け入れ拠点を確保し、組織づくりを推進

2020年度から開始した所蔵館との連携は、多くの専門団体が参画するネットワークへと成長した。専門性の高いカンファレンスをオンラインで開催し、それぞれの所蔵館が持つ知見を共有している。今年度は、持続可能な保存体制の構築に向けて、一般社団法人ゲームアーカイブ機構(仮)準備会を結成し、その実務を担当する組織として一般社団法人コトモノラボを設立した。また、ゲームアーカイブの物理的な拠点を京都と岐阜に確立した。

ゲームアーカイブ機構(仮)は、産業界とのパートナーシップを主軸に、官公庁や学術機関をつなぐ中核的な役割を担う予定である。一方で、既存の組織であるゲームアーカイブ推進連絡協議会は、任意団体や個人を含む多様な主体による、独自のネットワークを構築していく。

2025年1月に設置したゲーム分野の相談窓口には、アーケードゲーム筐体の寄贈や遺品整理、修理・補修関連を中心に相談が寄せられた。それぞれの相談内容に応じて、所蔵館ネットワークから適切な相談先を紹介している。

展示・カンファレンスを通じたアウトリーチ活動では、「のこす!いかす!!マンガ・アニメ・ゲーム展 in Tokyo 2025」において、見える収蔵庫という展示手法を導入した。これは、株式会社セガの「アウトラン」などを用い、収蔵・保守・展示のプロセスを同時に公開するものである。

アウトリーチ活動の総括として、協議会のカンファレンスと「ARCADE CIRCUIT 2026」を開催した。カンファレンスでは株式会社KADOKAWAデジタルエンタテインメント担当 シニアアドバイザーの浜村弘一氏を迎え、ゲームメディアの視点から見たゲームの進化と保存について議論を深めた。ニコニコ生放送などのプラットフォームを有効活用したことで、4000人規模の同時参加および満足度95%以上という高い評価を得た。

「ARCADE CIRCUIT 2026」では、ハードウェア開発者の知見を記録することに主眼を置き、日本のビデオゲーム黎明期の技術史を、未来へ継承するためのアーカイブを実施した。国立新美術館を会場とし、株式会社タイトー技術顧問の三部幸治氏、元株式会社セガ・エンタープライゼス研究開発の吉井正晴氏、OBSゲームリサーチ 代表のおにたま氏が登壇。オンラインを含めた参加者は延べ1万6000人以上に達した。参加者へのアンケートによると、8割以上がハードウェアの老朽化や開発者の高齢化による証言の消失に強い危機感を持っており、本事業が取り組む課題の緊急性が、社会的に広く共有されていることが確認できた。

産業界への調査においては、開発関連資料(中間生成物)の保存について、専門部署の不在や現場担当者の記憶に依存する管理の限界が浮き彫りとなった。他方で、ゲームのIPの商業性の高さから、資料の社外への持ち出しに関する課題は多い。また、オンラインゲームの保存の複雑性や、大型資料の維持コストといった課題が見えた。

今後の計画

個別の課題に対し、具体的に対策を講じるだけでなく、機関を横断するコンソーシアムを通じて総合的に推進していく方針である。2026年度は一般社団法人ゲームアーカイブ機構(仮)の法人化に向けた準備を進め、産官学が一体となった組織づくりを本格化させる。

技術面では、科学的知見に基づきアーカイブの初期対応を標準化し、効率的な保存管理手法を模索する。また、引き続き「ARCADE CIRCUIT」の開催などを通じて産業界との連携を深めていく予定である。

左から、尾鼻氏、井上明人氏(立命館大学 映像学部 准教授)、小出治都子氏(ZEN大学 コンテンツ産業史アーカイブ研究センター 准教授)

このテーマに関連した記事

Media Arts Current Contentsのロゴ