令和4年度 報告会・実施報告書「ゲームアーカイブ所蔵館の連携強化に関する調査研究 2022」学校法人 立命館 立命館大学ゲーム研究センター

令和4年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業 報告会が、2023年2月20日(月)にウェブ会議システムZoomにて開催されました。メディア芸術連携基盤等整備推進事業では、産・学・館(官)の連携・協力により、メディア芸術の分野・領域を横断して一体的に課題解決に取り組むとともに、所蔵情報等の整備及び各研究機関等におけるメディア芸術作品のアーカイブ化を支援しています。また、アーカイブ化した作品・資料等を活用した展示の実施に係る手法等を開発・検討することにより、貴重な作品・資料等の鑑賞機会の創出を図っています。本事業の実施を通じて、アーカイブ及びキュレーションの実践の場の提供や今後のメディア芸術の作品等の収集・保存・活用を担う専門人材の育成に寄与することを企図しています。報告会では、本事業の一環として実施した五つの分野別強化事業の取り組みの主旨や進捗状況の報告、メディア芸術連携基盤等整備推進事業の事務局調査研究及びメディア芸術データベース等に係る調査研究事業に関する報告がなされ、有識者検討委員からの質疑や助言が加えられました。本稿ではそのうちの「ゲームアーカイブ所蔵館の連携強化に関する調査研究 2022」を取り上げます。

報告者:立命館大学大学院 先端総合学術研究科 授業担当講師 尾鼻崇

事業の概要

日本が創作するデジタルゲームは1980年代以来、世界中に経済的・社会的影響を及ぼしてきた。しかし、国内においてゲームの収集・保存に対する取り組みは鈍く、アーカイブの規模、質、持続可能性においても未成熟な状況にある。そこで本事業では、調査実施主体である立命館大学ゲーム研究センターを中心に、複数の団体と協力しつつ、ゲーム所蔵館の連携の枠組みを構築、ゲームアーカイブの保存環境を整備するための施策を行っている。具体的には、ゲームアーカイブ利活用調査、メディア芸術データベース(MADB)利活用推進、産業界連携強化、国内所蔵館連携、国際所蔵館連携の五つに分けて、各関係機関とも協働しながら効率的に事業展開している。

実施内容と成果

本事業では、ゲームアーカイブ利活用調査を大阪樟蔭女子大学と連携し、所蔵館利活用調査、ゲームマシン保守、産業界状況等の調査を実施している。また、MADB利活用推進では、大阪国際工科専門職大学と共同でMADBの登録情報拡充のため、国立国会図書館や一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)等が公開するリスト化されていない情報、利活用の促進が期待できる情報等の作成を進めている。産業界連携強化では、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、NPO法人国際ゲーム開発者協会(IGDA)、ゲーム開発者らの協力を受けてゲーム開発技術展を企画。国内所蔵館・国際所蔵館との連携に関しては、国内ではゲームアーカイブ推進連絡協議会での協働、国際ではストロング博物館等との協働によって連携強化を図り、カンファレンスやセミナーの開催も行ってきた。

以上から、今年度の事業展開については、以下の3点を大きな柱として実施した。

まず、①「ゲームアーカイブ所蔵館のさらなる連携強化と情報発信」では、ゲームアーカイブ推進連絡協議会にアナログゲームミュージアムが正式加盟した。また、アニメーション分野、マンガ分野など、他分野を交えたカンファレンスを実施し、近隣領域の参加者に広く本事業の活動を伝えることができた。同時に、分野を超えた課題発見があった点でも成果を残せた。

次に、②「MADB登録データと外部データのマッピング推進」として、国立国会図書館所蔵とCEDiL講演資料のデータマッピング、ゲーム資料展示とゲーム関連受賞作品のデータ作成を行った。ただし、MADBのスキーマにゲーム分野のデータ登録を進めるには相応の時間を要するため、MADBでの公開とは別の方法でオープンデータ化を並行して進め、情報公開速度を加速させていく必要がある。

続いて、③「ゲームアーカイブ利活用のための各種調査」では、ゲーム企業やゲーム機器保守に関する調査を行い、ゲーム資料の所蔵・保管の困難さ、動作可能な機体の担保方法、法的制度の必要性、相談先をどうするかなどの課題が見えてきた。さらにオンライン音楽展示「Ludo-MusicaⅢ」では、展示対象をゲームに限定せず分野横断を切り口とし、ゲーム開発における技術の歴史を紹介した。このように産業界が発信する情報をキュレーションし、データベースと連携させていくことには、産学官連携に基づくアーカイブ利活用の方法論としての価値が認められ、今年度の施策はそのためのスタートアップとして考えている。

今後の課題

今後の展望としては、今年度の成果を踏まえ、組織化活動の強化(所蔵館の目録の充実化や相互連携の強化)、アジア圏等を中心とした国際連携の強化、産業界と連携した開発関連資料の保存、そしてさらなるアウトリーチのための施策があげられる。また、過年度に実施した所蔵館の所蔵品調査も、時期的に更新が必要である。一方、ゲームアーカイブ利活用調査では、主に分野横断やゲーム機器の保守を重点的に進めていく必要があり、次年度以降の課題となっている。

尾鼻崇氏

実施報告書(PDF)

※URLは2023年6月20日にリンクを確認済み

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