小倉 健太郎
2010年代から行われるようになり、近年はすっかり定着した感のあるドローン・ライト・ショー(ドローン・ショー)。プログラミング制御されたドローンが夜空を駆け巡り、LEDの光によって図形を展開していくさまは、時に「アニメーション」と称されることがあります。そこで本稿では、アニメーションとは何か、またどういったものを指すのかを示し、ドローン・ショーの制作過程にも踏み込みながら、ドローン・ショーがアニメーションと表現される理由を読み解きます。

夜空を彩るドローン・ライト・ショー(ドローン・ショー)。数多のドローンがLEDの光を灯し夜空に図形を描き、フォーメーションを変えて図形が動いていきます。近年定着しつつありますが、これに関連してアニメーションという言葉が使われることがあります。一般的なアニメーションとは異なりますが、いかにしてドローン・ショーがアニメーションでありえるのでしょうか。まずは、アニメーションとは何かという問いからはじめましょう。
アニメーションという言葉で、僕らがまず想像するのは映像としてのアニメーションでしょう。映画やテレビなどの違いを問わず、動く映像は実際には静止画の連続で構成されています。一秒間に24コマや60コマなどの静止画を連続で表示することで、僕らはそれを動画と認識するのです。
この現象を利用するのはライブ・アクションでもアニメーションでも変わりません。ただし、画像の獲得方法は異なります。対象を通常速度で撮影して連続的に画像を獲得すればライブ・アクション、一コマごとに撮影(コマ撮り)を行って画像を獲得すればアニメーションと見なされるのが一般的です1。例えば、セル・アニメーションでは、少しずつ図柄の異なる画を取り替えながら断続的に撮影を行っていました。こうして獲得した静止画を連続表示すると、動きの錯覚が生じるのです。
今日ではコンピュータ上で制作されるのが一般的ですが、米アカデミー賞はこうしたものを含めて「コマごとの技術」(frame-by-frame technique)でつくられたものをアニメーションと見なしています2。
映画誕生以前に生まれたフェナキストスコープ、ゾートロープ(図1)といった19世紀の光学機器/玩具もまた、アニメーションと見なされることがあります。これらは少しずつ図柄の異なる像が描かれた装置を回転させ、装置に設けられたスリットからそれを覗くと、あたかも像が動いているように見えるものでした。原理的には上述したアニメーション映像と同じものです。

現代でも、こうした現象を利用した作品が制作されることがあります。1980年に制作されたビル・ブランドの作品《マストランジスコープ》(Masstransiscope)は、ニューヨーク地下鉄のトンネルの壁に約91m幅の絵を描いたもので、これに蛍光灯で照明が当てられています。絵とレールの間にはスリットが設けられており、乗客が列車でこのトンネルを通過すると、車窓からは描かれた絵が動いて見えます(図2)。装置を回転させるのではなく、観客の方が動くことでゾートロープと同様の動きの錯覚を起こしているのです。

さらに、こうしたものの他にアニメーションと呼ばれるものがあります。例えば、古代の盃に描かれた動物の図が発見された際に「世界最古のアニメーション」と呼ばれたことがあります。これは動物の動きを描いているという点からアニメーションと見なされたようです3。
日本では、12世紀の絵巻物がアニメーションとされたことがあります。高畑勲は、日本のマンガやアニメを「おもに輪郭線と色面で描かれたさまざまな絵をならべ、それに言葉をそえて、時間とともに、お話をありありと語ったもの」4と定義し、そうした試みはすでに平安後期や鎌倉前期になされていたとします。そして、絵巻物を「12世紀のアニメーション」と呼んでいるのです。
これらは、制作当時アニメーションと呼ばれたわけではありません。また、僕らの目に直接的に動きの錯覚として入ってくるものではありませんが、ある点においてアニメーション映像と共通するため、アニメーションと呼ばれています。
また、1960年代の英国のテレビシリーズ「サンダーバード」のように、コマごとの技術を用いていない映像作品もアニメーションと呼ばれることがあります5。ここで用いられたスーパーマリオネーションは、機械仕掛けで人形の動きや表情を制御するというもので、撮影自体はリアルタイムで行われていました。コマごとの技術という定義には含まれませんが、無生物に動きを与えるという点ではコマ撮りアニメーションと共通しています。
議論がある考えだと思いますが、アニメーション史家のベンダッツィは「アニメーションとは、さまざまな時代において人々がアニメーションと呼んできたものすべてである」6と述べています。こうした考えは、アニメーションの範囲を実際の呼び方にしたがって広く取った、いわば広義のアニメーション概念とも呼べるものです。この節で見てきたものは、必ずしも多くの人がアニメーションと考えているわけではありませんが、広義のアニメーションには包括されうるでしょう。
それでは、この記事の本題となるドローン・ショーはどうでしょうか。
ドローン・ショーのもととなるアイデアは、オーストリアの都市リンツで生まれました。同地を拠点とするアルス・エレクトロニカは、主にメディアアートに関わる機関として知られており、そのうちの一つとして未来ラボ(FutureLab)を運営しています。この未来ラボこそがドローン・ショーのもととなるアイデアを生み出したグループです。
2012年、未来ラボは「スペクセルズ」(Spaxels)という考えを提唱し、実践しています。これは、「形状や性質をダイナミックに変化させられる夢のような物理的マテリアル」7として考えられた「ラディカル・アトムズ」(Radical Atoms)という概念の実用化の一例として提示されました。
実用上は、4枚の回天翼を持つクアッドコプター(ドローン)を用いて、空中で変形可能なディスプレイを展開するというもので、スペース・ピクセルズ(Space Pixels)の略でスペクセルズと名付けられています。
スペクセルズでは、配置された各ドローンを一つひとつのピクセルと見なします。一般的なディスプレイと同様に、配列した各ピクセル(ドローン)のLED点灯の有無によって図像を表示する「モードA」の他に、点灯したドローンが自由に動いて図像を変えていく「モードB」という二つのモードが想定されています(図3)。また、ドローンは立体的な機動が行えるため、3次元の像を空中で展開することもできます。

各ドローンの移動や点灯はプログラムで制御されており、人間の手で直接操作するわけではありません。コンピュータ上でプログラムを組み、それをドローンに送ります(図4)。

コンピュータ上でプログラムする段階で、アニメーションという過程が含まれています。例えば、インテル(Intel)社のドローン・ショー制作過程では、「1. 計画」「2. 設計」に続いて、「3. アニメイト」(Animate)という段階が設けられており(図5)、ここではアニメーション担当者が「アニメーションのモデルをつくり、インテル独自のソフトウェアを使用して、各ドローンの軌道を生成」します8。この段階では、実際に(コマごとの技術という定義における)アニメーション技術が用いられていると考えることができます。

その段階の先に、実際にドローンで空中に図像を表示するという段階がくるわけです。先述したモードAで点灯の配列を変更することで図像を動かして見せる場合、アニメーション映像と同様の原理で動きの錯覚を見せていることになります。一方、モードBでは、実際にドローンが動くことで図像を動かすことになるため、アニメーション映像とは異なる原理で動きを与えていることになります。
しかし、スペクセルズという概念を提示した論文9では、そうした区別はとくになされておらず、画像をアニメーティング(animating)させる方法として、モードAとモードBの双方が挙げられています。ここでは、先の「サンダーバード」の例などと同様に、無生物に動きを与えるという点でアニメーションと共通する、いわば広義のアニメーションの呼び方に立ち返っているように見えます。
ここまで、ドローン・ショーにはアニメーション技術が用いられており、また広義にはアニメーションと呼ばれるものだということを見てきました。一方、文化としてはどうでしょうか。一般的なアニメーションとは異なるように思えるのはたしかです。
映画学者ゴードローは「文化シリーズ」という概念を提唱しています10。1895年、リュミエール兄弟によってシネマトグラフが発明されましたが、いわゆる「初期映画」はこうした装置をマジック・ランタンのような従来の文脈で用いたものであり、映画という確立された制度は存在しなかったというのです。
こうした考えに従えば、ドローン・ショーはドローン技術とアニメーション技術が用いられていますが、イベントでの実施など花火と同様の会場で行われることが多く、そうした文脈で用いられていることが多いと考えられます。少なくとも今日のドローン・ショーは花火と同様の「文化シリーズ」に属すると言えるでしょう。
しかしながら、未来もそうであるとは限りません。今日、スペクセルズが提示した考えは広く普及しており、ドローン・ショーにはさまざまな企業が参入しています。当初は簡単な図形を表示できるのみでしたが、より複雑な図像も表現できるようになっており、地上の音響効果とともに映画の場面を再現したものなどが存在します。また、一度のショーで1,000機以上のドローンが用いられることも増えています11。
ディスプレイの画素数(ピクセル数)が増えると、より細かい画像を表示できるようになるのと同様に、ドローンの数が増えればより細かい図像を表示できるようになります。もちろん、ドローンは比較的にサイズがあるものなので、ただ増えれば良いというわけではなく、ドローン同士が密集して解像度を上げるために、より小型化していく必要があります。
現在すでに簡易的ながら映画の一場面を再現できていることを考えると、YouTubeの最低画素数(アスペクト比16:9の場合で約3万7千画素)を越えるドローンを展開できるようになると異なる局面が現れてくるようにも思えます。そのとき、そこで「上映」されるものは、果たしてどのように呼ばれるでしょうか。
脚注
※URLは2026年2月24日にリンクを確認済み