MACCメインビジュアルプロジェクト 「メディア芸術データベース」で好きな作品をひたすら調べる――萬波ユカさんインタビュー

写真:高橋 宗正

マンガやアニメ、ゲームなどコンテンツのデータベースの整備が進んでいます。そのなかでの課題の一つが、データベースの活用方法です。MACCメインビジュアルプロジェクトでは、「メディア芸術データベース」(MADB)のデータを、ファッションという別の芸術表現に変化させることを試みます。
グローバルな舞台で活躍するモデルの萬波ユカさん。そんな萬波さんの子ども時代を彩ったものが、マンガやアニメーション、ゲームでした。同プロジェクトでは、まず萬波さんが熱中したコンテンツを「メディア芸術データベース」で検索してもらい、その検索結果をアーティスト原淳之助さんがデータビジュアル化。そのデザインをもとに、MACCのクリエイティブディレクターで本企画の全体ディレクションを担当する小田雄太さんが、ハトラ(HATRA)と共同で洋服をデザイン。最後に完成した衣装を纏った萬波さんをカメラマンの奥脇孝典さんが撮影しました。

PRD/CD/AD: Yuta ODA(COMPOUNDinc.)
WEB: HANDSUM
MODEL: Yuka MANNAMI(DONNA)
COSTUME: HATRA
DATA VISUAL: Junnosuke HARA
PHOTO: Takanori OKUWAKI
HAIRMAKE: Tomomi SHIBUSAWA

今回は企画の根幹をつくりあげた、萬波ユカさんへのインタビューの様子をお届けします。

萬波 ユカ
1991年、三重県生まれ。熊野古道の近くで育つ。大学卒業後、1年間看護師として勤め上京。2015年にモデルデビュー。デビュー直後のミラノコレクション出演を皮切りに、以降、ショーや広告、雑誌など世界を舞台に活躍中。2021年、自身がオーナーを務めるヴィンテージストア「MAN VINTAGE」をオープン。

子どもの頃出会った作品で印象に残っている作品は

『銀河鉄道999』です。両親ともゲームもマンガも好きだったので、その影響が大きかったと思います。マンガから入ったので、アニメでの鉄郎のイケメンさに「誰?」って笑っちゃいました。アニメは夜行バスの中のテレビで見ましたね。田舎だったので、TV アニメはあまり映らなかったんです。『魔法騎士レイアース』や『美少女戦士セーラームーン』はぎりぎり観られました。

小学6年生のときに、学校で「一番本を読んだ人」に表彰されたことがありました。マンガもカウントに含まれていて、私は小説も読んでいましたが、マンガはその十倍以上読んでいて。『魔探偵ロキRAGNAROK』を読んで北欧神話の知識が身に付いたり、『動物のお医者さん』を読んで、獣医さんになりたいって思って理系の勉強を頑張ったり。自分の中の知識はマンガ由来のものが多いんです。

メディアミックス作品といえば「ポケモン」

ポケモン世代で、当時読んでいた『ポケットモンスターSPECIAL』は今もめっちゃ好き。ポケモンは少年誌少女誌問わず、いろいろな雑誌でコミカライズがされていて、「別冊コロコロコミック」に載っていた『電撃!ピカチュウ』という作品は、カスミがエッチなのが衝撃でした。

メディア芸術データベース「ポケットモンスター」の検索結果

小学生の頃は、自分でもポケモンのマンガを描いていたんです。実はそれがいまだに実家のトイレに飾ってあって(笑)。中学生でも自作のマンガを描いて、みんなで回し読みをしていました。今思えばめちゃくちゃ黒歴史。

「ゼルダの伝説」シリーズ、全部持っていると思ったら…

当時は姉と一緒にゲームで遊ぶことが多くて、何でも興味があったので、片端からプレイしていました。当時読んでいた「月刊コロコロコミック」に、「ボンバーマン」や「カービィ」、「ドンキーコング」など、ゲームのコミカライズ作品が多く掲載されていたので、ゲームから入って、マンガも読むことが多かったです。

姫川明さんの「ゼルダの伝説」のコミカライズ作品が大好きで、今でもずっと読んでいます。初めて自分で買ったマンガです。海外版のマンガまで買ったんですよ。ゲームは、ニンテンドウ64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』から入りました。3Dの金字塔です。

メディア芸術データベース「ゼルダの伝説」の検索結果

分野を横断して、関連情報をいろいろ調べられるのは楽しいですね。これも、これも、これも…ゲームも全部持ってる。でも、石ノ森章太郎さんが描いているのは知らなかった。めちゃくちゃ気になるなー。またあとで調べてみます!

「メディア芸術データベース」を使ってみて

実家に台風がきたときに、マンガや活字の本など、全部水に浸かってしまって、本をほとんど捨てたことがありました。モノは失ってしまう可能性があると思うと、こうしたデータベースがあると、調べる手がかりになって嬉しいですね。どこに所蔵されているのかなど、データベースは何かと何かを繋ぐっていう役割なんだと思います。

サイトを見ていると、また読んだり遊んだりしたくなります。最近は昔読んでいたマンガを買い直したりよくしているので。最近だと、『世紀末リーダー伝たけし!』『ボボボーボ・ボーボボ』を集めたり、「花とゆめ」の作品もいっぱい買ったりしました。電子書籍の普及で買いやすくなりましたね。

ゲームで言えば、昔のホラーゲームをめっちゃやりたいんです。ホラーゲームが大好きで。でも、プレミアがついていたり、そもそも「動かん…!」っていうのもあって。サイトに「復刻を依頼するボタン」をつくって、依頼が多く集まったら実際に動き出すのって、どうですか?

アートとしてのファッション

マンガやアニメ、ゲームだけではなく、ファッションを日本のアートの一つとして、力を入れてほしいと思っています。世界的に活躍しているアジア系のモデルだと、中国や韓国の方が多いんです。例えば韓国ではファッションを国策として進めていて、海外に文化として輸出しています。一方、日本ではあまりそうしたサポートがなく、ファッションやモデルが、芸術としては認められてないようなところがあるな、と。また、才能のある子たちが海外で人気になっても、国内ではまったく認知度がないこともよくあるんですよね。そうすると、夢半ばで道を諦めてしまったり…。海外で仕事をしていると、アートに対するリスペクトの違いがあるなと感じます。日本のファッションも、日本が産んだアートとして力を入れてほしいですね。

今回のインタビューをもとに、アーティストの原淳之助さんがデータをビジュアル化した作品を制作しました。その内容についてはMACCにて公開、その後の完成した洋服のデザインや撮影についての詳細は、美術手帖ウェブ版にてご覧いただけます。

※URLは2023年2月8日にリンクを確認済み

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