塚田 優
日本テレビ系の映画番組『金曜ロードショー』の歩みと、同番組で放送されてきたスタジオジブリ作品を振り返る「金曜ロードショーとジブリ展」が寺田倉庫B&C HALL/E HALLで2023年6月29日(木)から9月24日(日)まで開催されています。本稿では、内覧会の様子をレポートしながら、ジブリアニメとテレビの関係や、見どころについてお伝えします。
スタジオジブリのアニメーションは、『金曜ロードショー』で繰り返し放送されてきた。興行的には苦戦した『となりのトトロ』(1988年)の人気を確固たるものにしたのも、公開翌年にあたる1989年の『金曜ロードショー』での放送だった。展示の冒頭では、そうした経緯がスタジオジブリで長年プロデューサーを務める鈴木敏夫の回想とともに映像で紹介される。
続くセクションでは、ずらりと並んだパネルによって、『金曜ロードショー』とジブリの歴史が関係者の証言と絵コンテによって回顧される。そのすぐそばには、当時流行していた本やCD、ガジェットが添えられ、ノスタルジーがかき立てられるような構成にもなっている。
パネル展示で興味深いのは、各作品の放送時の視聴率が記載されていたことである。その変遷からは、メディアの王様としてのポジションをキープしていた時代における、ジブリ作品の圧倒的な人気がわかるだろう。2003年の『千と千尋の神隠し』(2001年)のテレビ初放送は、『金曜ロードショー』歴代トップの46.9%の視聴率を記録しており、歴代2位は1999年放送の『もののけ姫』(1997年)が35.01% 、歴代3位は2006年の『ハウルの動く城』(2004年)が32.9%と、同番組の視聴率トップ3をジブリ作品が占めていることが紹介される。
歴代のジブリ作品のポスターや、それが3次元に再現されたポスタースタジオのセクションも見どころの一つだ。ここで来場者はサンや千尋になりきって写真撮影をすることができ、夏休みも含む会期中は記念撮影スポットとして賑わうだろう。
大きな幻燈楼も、思わず見入ってしまう完成度だ。これは2018年から2019年にかけて開催された「ジブリの大博覧会」富山展に際して制作されたもので、ジブリキャラクターをモチーフにしたガラスに光が照射され、壁に拡大されたイメージが投影される。
展覧会の最後を締めくくるのは、『風の谷のナウシカ』(1984年)の世界観が再現された空間だ。雨宮慶太作品の美術でも知られ、近年では実写映画版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年)や、『シン・ウルトラマン』(2022年)といった話題作にも参加する造形作家・竹谷隆之が手掛けた王蟲、大王ヤンマ、ムシゴヤシなどが展示され、間近でその迫力を体感することができる。
近年、スタジオジブリに関連する展覧会は数多く開かれている。それらと比較すると「金曜ロードショーとジブリ展」はエンターテインメントに振り切っていると鈴木敏夫は開会セレモニーでコメントしているが、このことは同展が日本テレビ主導で企画されたことが関係しているようである。1985年に水曜日から移動するかたちで始まった『金曜ロードショー』は、2012年からはSNSでの広報1にも力を入れるなど、戦略を練り直しながら現在も放送を続けている。
この度の展覧会は、家族連れでも楽しめる内容であると同時に、テレビとジブリの関係性を再考する機会となっていた。特に近年の状況を踏まえると、映画の視聴方法がサブスクリプションサービスでの配信へと移り変わるなかで、国内での配信をいまだ解禁していないジブリにとって、『金曜ロードショー』という番組は、ますます重要なものとなっているのである。
脚注
information
金曜ロードショーとジブリ展
会期:2023年6月29日(木)~9月24日(日)10:00~20:00
※最終入場は19:30まで
会場:寺田倉庫 B&C HALL/E HALL
入場料:大人1,800円、中・高校生1,500円、小学生1,100円
主催:日本テレビ、ローソンチケット、ディスクガレージ、第一通信社、TOKYO FM
https://kinro-ghibli.com/
※URLは2023年7月25日にリンクを確認済み