アニメイテッド・カートゥーンという語は、もともとは紙媒体のマンガ作品、いわゆる「カートゥーン」を映像化した作品を指す語でしたが、やがてオリジナル映像作品を含めて指す語となっています。マッケイ(Winsor McCay, 1871-1934)やフライシャー兄弟(Max & Dave Freischer: Max Fleischer 1883-1972; Dave Fleischer, 1894-1979)、さらにはディズニー(Walt Disney, 1901-1966)といった制作者たちによって映像文化において大きな位置を占めるようになりました。基本的にコマ撮り2で制作され、平面の絵/画が想定されていました。アニメーション史家ピアソン(Ryan Pierson)は、20世紀の大半において観客が知っていたアニメイテッド・カートゥーンは、セルに描かれたもので、滑稽や子ども向けの要素を持つものだったと指摘しています3。こうした作品は今日ではアニメーション作品の一部と見なされますが、20世紀前半には「アニメーション」という語は作品のジャンルを指すものとしては一般的には用いられず、アニメイテッド・カートゥーンをつくるための技術を指す用語として用いられていました4。
パペトゥーンの制作者であるパルは、1908年にハンガリーで生を受け、青年期に米国のアニメイテッド・カートゥーン作品に触れています。大学で建築を学んだのち、欧州各国で職を求め、ドイツの映画会社UFA(Universum Film AG)でタバコをコマ撮りした作品などの広告作品の制作を行います。しかし、当時のドイツは国民社会主義ドイツ労働者党、通称ナチスが台頭する時代でした。1933年、パルはドイツを離れます。1934年、オランダのフィリップス・ラジオ社のために人形をコマ撮りした短編シリーズの制作を開始し、パルドール(pal-doll)の特許を取得。この短編シリーズがのちにパペトゥーンになります。さらに1938年、パルは欧州を離れ米国に移住、パラマウント社と契約し、本格的にパペトゥーン・シリーズの制作を開始します。
1 Frederick Arthur Talbot, Moving Pictures: How They Are Made And Worked, Philadelphia: J. B. Lippincott Co., 1912.
2 一コマ一コマごとに図柄の異なる画やポーズの異なる人形を撮影する技法を指します。
3 Ryan Pierson, “On Styles of Theorizing Animation Styles: Stanley Cavell at the Cartoon’s Demise,” The Velvet Light Trap, no. 69, Spring 2012, pp. 17-26.
4 例えば、1949年に出版されたWebster’s New Collegiate Dictionary(Springfield: G&C Merriam)では「アニメーション」について簡単に「アニメイテッド・カートゥーンの作成」と記しています。
5 映画評論家ポタムキン(Harry Alan Potamkin, 1900-1933)は1930年代初頭の段階ですでにコマ撮りという観点からアニメイテッド・カートゥーンや人形映画などを「アニメーション」というジャンルの一部として考えていましたが、この考えは定着していませんでした(小倉健太郎「アニメーションという語はいつから作品ジャンルを指すようになったのか:H.A.ポタムキン(1900-1933)のアニメーション観」『成城美学美術史』第30号、2024年、1~21ページ)。
6 Michel Frierson, Clay Animation: American Highlights 1908 to the Present, Revised ed., New York: Twayne Publishers, 1994.
7 Gail Morgan Hickman, The Films of George Pal, South Brunswick: A. S. Barnes, 1977.
8 Motion Picture Herald, vol. 130, no. 11, March 12, 1938, p. 44.
9 人形のパーツを取り替える方法自体はすでに行われていました。
10 Rolf Giesen, Puppetry, Puppet Animation and the Digital Age, London: Routledge, 2018.
11 おかだえみこ『人形アニメーションの魅力』河出書房新社、2003年、218ページ。
12 Showmen’s Trade Review, vol. 42, no. 19, May 26, 1945, pp. 26-27.
13 Alvin Wyckoff, ““Puppetoons”—George Pal’s Three-Dimensional Animations,” American Cinematographer, vol. 22, no. 12, December 1941, p. 563.
14 Speaking of Animals:大部分が動物の実写で構成されているものの、口をコマ撮りすることで、あたかも動物たちが話しているように見えるシリーズです。1946年度の分類ではアニメーションに入っていたものの、コマ撮りがわずかにしか用いられていないことなどから翌年にはライブ・アクション部門に移行しています。
15 Showmen’s Trade Review, vol. 46, no. 1, January 18, 1947, p. 46.
16 Sondra Gorney, “The Puppet and the Moppet,” Hollywood Quarterly, vol. 1 no. 4, 1946.
18 John Lasseter, “Principles of Traditional Animation Applied to 3D Computer Animation,” ACM SIGGRAPH Computer Graphics, vol. 21, no. 4, 1987, pp. 35-44.
19 Giesen, op. cit.
1 Frederick Arthur Talbot, Moving Pictures: How They Are Made And Worked, Philadelphia: J. B. Lippincott Co., 1912.
2 一コマ一コマごとに図柄の異なる画やポーズの異なる人形を撮影する技法を指します。
3 Ryan Pierson, “On Styles of Theorizing Animation Styles: Stanley Cavell at the Cartoon’s Demise,” The Velvet Light Trap, no. 69, Spring 2012, pp. 17-26.
4 例えば、1949年に出版されたWebster’s New Collegiate Dictionary(Springfield: G&C Merriam)では「アニメーション」について簡単に「アニメイテッド・カートゥーンの作成」と記しています。
5 映画評論家ポタムキン(Harry Alan Potamkin, 1900-1933)は1930年代初頭の段階ですでにコマ撮りという観点からアニメイテッド・カートゥーンや人形映画などを「アニメーション」というジャンルの一部として考えていましたが、この考えは定着していませんでした(小倉健太郎「アニメーションという語はいつから作品ジャンルを指すようになったのか:H.A.ポタムキン(1900-1933)のアニメーション観」『成城美学美術史』第30号、2024年、1~21ページ)。
6 Michel Frierson, Clay Animation: American Highlights 1908 to the Present, Revised ed., New York: Twayne Publishers, 1994.
7 Gail Morgan Hickman, The Films of George Pal, South Brunswick: A. S. Barnes, 1977.
8 Motion Picture Herald, vol. 130, no. 11, March 12, 1938, p. 44.
9 人形のパーツを取り替える方法自体はすでに行われていました。
10 Rolf Giesen, Puppetry, Puppet Animation and the Digital Age, London: Routledge, 2018.
11 おかだえみこ『人形アニメーションの魅力』河出書房新社、2003年、218ページ。
12 Showmen’s Trade Review, vol. 42, no. 19, May 26, 1945, pp. 26-27.
13 Alvin Wyckoff, ““Puppetoons”—George Pal’s Three-Dimensional Animations,” American Cinematographer, vol. 22, no. 12, December 1941, p. 563.
14 Speaking of Animals:大部分が動物の実写で構成されているものの、口をコマ撮りすることで、あたかも動物たちが話しているように見えるシリーズです。1946年度の分類ではアニメーションに入っていたものの、コマ撮りがわずかにしか用いられていないことなどから翌年にはライブ・アクション部門に移行しています。
15 Showmen’s Trade Review, vol. 46, no. 1, January 18, 1947, p. 46.
16 Sondra Gorney, “The Puppet and the Moppet,” Hollywood Quarterly, vol. 1 no. 4, 1946.
18 John Lasseter, “Principles of Traditional Animation Applied to 3D Computer Animation,” ACM SIGGRAPH Computer Graphics, vol. 21, no. 4, 1987, pp. 35-44.